スポーツ選手と筋肉のバネ

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リー・チョンウェイ(台湾)選手はバドミントン界で数々のタイトルを獲得し、誰もが知る個人的にも憧れのレジェンドです。バドミントン経験者の方で知らない人も少ないのではないでしょうか。技術やラリー中のスタミナ、パワーどれをとっても優れていて、試合運びも抜群な選手です。そんなリー・チョンウェイ選手も世界の舞台で初めから勝てた訳ではないようです。

しかしある時からとうとう当時のチャンピオンであり、ライバル中国のリンダン選手に競り勝ち、一気に常勝街道を進んでいくことになります。その勝利に導いた明らかな違いは「脚力」だと思います。前後のフットワーク、特に前へ蹴り伸びる速さが以上なほど進化したこと、あくまで個人的な印象かもわかりませんがその下半身、筋肉のバネは以前と明らかに変わり、体重移動にメリハリがある柔らかいが、力強いフットワークを身に付けたことが勝利の常勝街道を作ったきっかけだと思いました。

柔軟性はスポーツ技術とリンクする?

当然リー選手は日々激しいトレーニングを誰よりも積み重ねてきたんだと思います。しかし、脚力や筋肉のバネは誰しもが鍛えられるのしょうか。黒人選手の筋肉のバネは昔から陸上界でも有名ではありますが、天性と言ってしまえばそこで終わり。私自身も12才からバドミントンを始めていき、体の成長期と共にバドミントン技術も比例して私なりにですが、結果を残せてこれた時期があります。

ただ、皆さんも経験したことがありませんか?誰しも「伸び悩む」時期があること。高校へと進むにつれ周囲の選手も同じように体ができ、実力も同じように成長していく中、なぜか同じ量の練習量を積んでいて自分はさほど伸びないのになぜか「伸びる」選手がいる。なので他校のライバルたちも今回は勝てたが、次はどう対策し、力をつけてくるかわからない、とプレッシャーにもなります。自分はそれまでにどうしても結果を出したい。自分はよくそんな時、力んでケガ(特に捻挫)もしてきた経験があります。自分は歴然と伸びない。でも伸びるヤツがいる。私の場合はすぐそばの同期でした。

今思えばですが、その同期は筋肉が柔らかく、バネがあった。同じセット数スクワットをして、私は足がパンパン、同期はすぐ回復する。その時は知識もないのでただ不思議でした。そして、入学当時と比べて実力が並びかけていると感じてからは特に「なんで?」って疑問が強くなった記憶があります。同じ量の練習量、練習時間を過ごしてきたのに。今思えば高校生当時は筋肉が硬いことが「かっこいい」と自慢だった単純な18歳でした。結果はギリッギリで県大会優勝したものの、四国大会は同期に大敗を喫しました。個人的な話で申し訳ない。

伸び悩んだら可動域

バネとはすなわち筋肉の柔らかさ。体の動きの根本は肩甲骨と股関節です。筋肉を鍛えることを否定するのではなく、鍛えた筋力の出力を上げる為にも遠心力を上げる、肩甲骨や股関節の前後、左右の可動域を広げる、「もっと腕や足を大きく自由に動かせるようにする」ということです。先程スクワットで私はすぐ足がパンパン、同期はすぐ回復するとお伝えしたように足は、大腿四頭筋、ハムストリングス(裏腿)があり、股関節と繋がっています。股関節からの膝までの距離を広げ、筋肉の弛緩を強くすることがバネです。同様に肩甲骨には表層筋と深層筋があります、そして、大胸筋、この周囲の筋肉と肘までの距離、角度が広がり、弛緩が強くなれば、多くの筋力を使わず今ある筋力の出力を借りて、遠くへ投げたり、強く打てたり、早く振れるようになります。

バドミントンで言えば、これまでよりふところが広くなり、強打を打つために肘が引けて、広がった可動域により遠心力が生まれ、鍛えた柔軟性で一気に筋肉を縮めて強く打てる。上半身と下半身の連動性が揃えば今までよりも強く、早いフットワークやスイングで技術も向上するといった原理です。ちなみに筋肉は体重自体も重くなる為、持久力ももっと必要になったり、重くなった分連戦や長期戦でのスタミナに影響が出やすいのではないかと思います。

まず鍛える!はちょっと変えた方がいいんじゃないのかな?って高校生の筋肉バカな自分にも言ってやりたいなと思います。こうした「体のバネ」を強化するというトレーニングは今の成長過程で「オスグット」や成長痛で悩む中高生にも知ってもらいたいです。誰にも伝えづらい痛み。誰もが意識せず成長する自分の体。次第に骨格に筋肉の伸びがついて行かず痛みに発展するという要因もあるからです。そして柔軟性はケガとも大いに関係している為、ただただ向上していく、それだけに集中する今を生きるスポーツ選手に柔軟性・体のバネを強化する大切さを知ってもらいたいなと思います。

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